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フはフラグメンツのフ

忌録考察

このページは阿澄思惟「忌録:document X」の考察を行うための個人的なメモです。本編の内容に多く触れているので、未読の方はご注意ください。


みさき
綾のーと。

「忌録: document X」考察まとめ - Togetter

みさき The Missing

概要

本書冒頭の「おことわり」に、本書は著者(阿澄)が収集した事件の記録資料であることが明記されている。よって本書の内容は阿澄が執筆したものではない。しかし、他の3章は実際の執筆者がはっきり?している(少なくとも阿澄ではない)のに対し、本章のみそれが不明である。そこで本章の執筆者は阿澄ではないと仮定し、Web版の作者名として記載されている「る」から「R」と呼ぶことにする。

鎮魂歌

  • たましずめのうた。実在する神楽歌。
  • 特徴的な「アチメ オオオオ オオオオ オオオオ」の節は阿知女作法と呼ばれる。
  • 掲載の意図は不明。
兵庫県警伊丹署による吉野美咲の情報提供を求めるビラの画像。
画像下に記載されたURLはサービス終了によって現在は存在しない。

事件

  • 1992年7月7日、兵庫県伊丹市の御願塚古墳にて吉野美咲(当時6歳)が失踪。
  • 古墳の周りは濠で囲まれ、両親が待っていた鳥居以外に出口はない。
  • 警察の捜索でも発見できず。警察犬も頂上の広場をぐるぐる回るだけだった。
  • 翌日、吉野家に奇妙な電話。不思議なイントネーションで意味不明なことを一方的に話し、最後に「もしもし」と告げて切れる。
  • 以後、毎年7月8日になると電話がかかってくるが、その内容について吉野夫妻は沈黙。
  • 記録者:R

取材

  • 失踪現場の現地取材。誘拐、失踪の不可能性の確認。
  • 1991年ごろから古墳周辺に浮浪者が住んでいたという噂。
    • 古墳には雨風をしのげるような場所はなく、他の場所で居住していたと思われる。
    • 人相風体をはっきり覚えている者はいなかったが、古墳の周遊路でニワトリを飼っていた事だけは皆覚えていた。
    • 事件前後に姿を消す。
  • 記録者:R

霊媒

  • 事件から1か月後、吉野美幸の叔母・結城フクの紹介で霊媒師・川上喜代子が吉野家を訪れる。
  • 交霊は川上の提案で8月14日に行われることになった。
  • 川上家と結城家は遠縁だが、親密な交流があった。
  • フクは幼い頃に喜代子の霊能力を目の当たりにして以来心酔している。
  • フクには軽度の統合失調症の疑いがある。
  • 記録者:R

交霊

  • 1992年8月14日17時頃、吉野家2階の美咲の部屋で交霊が行われる。
  • 出席者:吉野義弘、吉野美幸、川上喜代子、川上の付添人
  • ”広島の駅から新幹線に乗って新大阪についたあと国鉄に乗り継いで・・・” ←川上は岡山在住では?
  • ”いまから美幸ちゃんを降ろしますけえ、美咲ちゃんのことを心でじっと念じてください。(強調は筆者)”
    • 著者の書き間違い?→Web版、書籍版とも同じ表記。
    • 川上あるいは話者の言い間違い?→直後にちゃんと「美咲ちゃん」と呼んでいるので考えにくい。
    • 「おことわり」に誤字脱字も原文のまま収録したとあるので、単純に誤字と思われる。
  • 交霊は途中まで上手くいっているようにみえたが、話が核心に迫ると突如霊が暴走し、失敗に終わる。
  • 美幸、卒倒し救急車で運ばれる。以後正気を失う?
  • 川上、美幸の首を後ろから絞める美咲を目撃。
  • 川上「ありゃあえれえ家じゃ、あがあな家じゃ知っとったらわしゃあ関わらんかった」
  • 話者:川上の付添人
  • 聞き取り時期:川上失踪前

談話1

  • 川上「もう終わりじゃ、殺したんはわしじゃ」→誰が死んだ?
  • 川上、話者が寝かしつけるも翌朝には失踪。村人の捜索の結果、裏(川上宅の?)の井戸の底で死んでいるのを発見。
  • 井戸の底で真っ黒い人影が川上の首を捻り上げているのを多数の村人が目撃。
  • 川上の死体はそのままに、井戸の上にコンクリート板と無数の石を乗せ封印。
  • その晩、話者の家に三次の春子から電話。川上が現れ「美恵子が事故に遭って重態だ」と告げたという。その後玄関が血塗れになっているのを発見。警察に通報。
  • 電話を受け、村中で合議。下野美代子の兄、牛窓徹が寺をやっているのでお祓いをしてもらうことに。しかし連絡を取る前から徹のもとでは怪奇現象が発生。さらに川上が死んだことを告げると、これは自分では手に負えないから、明日えらい人を連れて行くといって電話を切られる。その直後、徹は車で田んぼにつっこみ、重態に。
  • 翌朝、事故のことを知った美代子が「こないなきち×い村に来たんが間違いじゃ」と村を飛び出す。その後、消息不明に。
  • 夜明けに村中の犬が騒ぎ出し、泡を吹いて死亡。
  • 井戸の蓋が開いているのを発見。警察が中を確認するが何もなかった。話者もそれを確認。
  • 数日後、松野武が無人の川上宅に火の玉が入っていくのを目撃。その晩、川上宅は全焼。
  • 今も川上の姿を見たという人がいる。
  • 話者:川上と同村の住人
  • 事件の時期:不明
  • 聞き取り時期:川上宅火災(13日)後
    • 松野武逮捕(18日)までの5日間に行われたとしたらタイミングが良すぎる。しかし松野の逮捕には触れていない。
    • あるいは取材を受けたことで、攪乱のために松野が警察に差し出された?

談話2

  • 人の魂を柱(人柱?)にする行為について。
  • 具体的な人名や地名、事件に関する言及は無し。
  • 話者:中国地方の民間宗教に携わる人間
  • 聞き取り時期:不明

談話3

  • 妙子が最近夜になると家の外を人が歩く音がすると訴える。夫が見張りをすることに。
  • 四日目の夜、妙子自身が歩いているのを発見。空ろな目で祝詞のようなものを呟いていた。
  • 翌朝、妙子は何も覚えていなかった。
  • 今も妙子はたまに家の中や外を歩き回っている。
  • 話者:妙子の家の近所の人間
  • 聞き取り時期:不明

資料

  • 川上の交霊術「カコイサマ」について書かれた書籍の画像。書名、著者共に不明。
  • 結城フクが吉野美幸に宛てた手紙と思われる画像。全5枚。
  • 吉野美幸が美咲を殺したとする怪文書の画像。
    • 美咲には知的障害があり、美幸は育児放棄し殺したとしている。
    • 一度破り捨てたものをテープで貼り合わせた跡がある。
  • 川上宅の火事を報じる新聞記事の切り抜き。
    • 13日午後9時17分頃、出火。約2時間10分後に鎮火。怪我人は無し。
    • 川上は公的には9日から行方不明扱い。
    • 住所は広島県三次市大田幸町
    • 18日、火事の第一発見者である松野武を放火の疑いで逮捕。松野は大筋で容疑を認める。
  • 意味不明の文章
    • 祝詞の逆再生=呪い?
    • 吉野家に7月8日にかかってきた電話の内容?
    • 「もしもし」→いそみそむ→五十 三十 六?
  • 美咲の顔の拡大写真。悪趣味。

人物

  • 吉野美咲
  • 吉野美幸
  • 吉野義弘
  • 結城フク
  • 川上喜代子
  • 川上の付添人
  • 話者1
    • 「談話1」の話者。
  • 春子
  • 美恵子
  • 下野美代子
  • 牛窓徹
  • 松野武
  • 話者2
    • 「談話2」の話者。
  • 先生
  • 話者3
    • 「談話3」の話者。
  • 妙子
  • R

時系列


疑問と仮説

  • Rは何者で、何が目的でこの文書を作成・公開したのか?
    • フクからの手紙→第三者に見せるとは思えない
    • 祝詞の逆再生→電話した本人か吉野夫妻以外知りえない
    • 破られた怪文書→吉野家に直接投函されたか貼り付けられたものではないか?
  • 「交霊」「談話1」の聞き取り時期、すなわち川上が失踪したのはいつなのか?
    • この文書の初出が「第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン」(2010年)で、「交霊」「談話1」の聞き取り時期が美咲失踪の数年後だとすると、20年近く放置されていたことになる。
    • 川上が失踪したのは、この文書が発表される数年前ではないか?


光子菩薩 Aweken

この話が完全な創作である可能性
  • これ以外の3篇には新聞記事や本人のブログなど、(作品世界で)実際にあった出来事であることを証明する証拠資料があるが、これにはそれがない。
  • 連続眼球くり抜き事件など犯罪史に残る凶悪事件だと思うが、それを報せる新聞記事などは提示されていない。
  • 仮に戦前・戦中の出来事だとしても、政府主導の人体実験によって大量の被害者が出たというのはいささか荒唐無稽すぎる。
  • 「忌避」の津田あるいは信田による創作なのではないか。

忌避(仮) The Ibi


綾のーと。 Japanese real ghost video


忌録:document X


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