視点（カメラ）の問題から考えると、ノベルゲームを含むアドベンチャーゲーム（ADV）は舞台演劇に近いものがある。
演劇はカメラである観客が動き回り、違う角度・距離から舞台を観ることは（基本的には）できない。役者も舞台の範囲でのみ演技をする。映画でいえば定点カメラによる長回し映像だ。
そしてADVもカメラが動くことはない。場所がどこであるかを示すためだけの書き割りに過ぎない背景画像の前で、キャラクターの立ち絵を次々と切り替えることで「演技」する。
▲クレナイソフト「Glare3」より、一般的なADVのゲーム画面。背景画像の切り替えにより場面転換はできるが、カメラそのものが動くことはない。グレアさんかわいいよグレアさん。
話は変わるが、「ノスタルジア1907」はADVだが、メインとなる尋問パートで面白いシステムを採用している。従来のADVのように選択肢やコマンドを選ぶのではなく、相手に対してどういう態度で接するか「姿勢（文字通りの体の構え）」を選ぶのである。「前のめり」になって強気な態度を示すか、「腰を引いて」弱気に見せるか、「席を蹴立てて」感情を露にするか、「考え込む」ような仕草で探りを入れてみるか、キャラクター達のエモーショナルなやり取りをグラフィカルに表現している。
▲ご存じシェールド・ウェーブ「ノスタルジア1907」より。実際のところ、正解の姿勢を選ばないと話が進まないのでシステム的には従来のADVとあまり変わりはない（笑）。
さて「Glare」と「ノスタルジア」のゲーム画面を見比べて、気付いたことはないだろうか。「Glare」の背景がシンプルなのとキャラクターが一人だけなので分かりにくいかもしれないが、すでに述べたように「Glare」のような一般的なADVの背景はただの書き割りで実体を持たないのに対し、「ノスタルジア」では「椅子」に座って「机」に手に置いたりしている。演劇であれば書き割りの前に小道具として椅子と机を置いたにすぎないが、絵にするとこれだけで視覚的にも意味的にもグッと立体的になる。
このような背景に合わせた立ち絵を用意し、これを細かく切り替えることで「動き」を表現する手法を
「劇場型（シアトリカル）ADV」と名付けたい。
もう一つ従来のADV（これはノスタルジアも含む）から変更したいのが「メッセージウィンドウ」だ。おそらくはキャラクターの顔に被らないようにだろう、大体の作品で画面下部に置かれる。しかしADVは「読む」ことがプレイの中心になるため、プレイヤーの視線は下部に寄りがちで、キャラクターの立ち絵切り替えがボンヤリとした印象になってしまう、ように思う（俺だけか？）。
そこで採用したいのが漫画のような吹き出しだ。これなら発言したキャラクターの近くに置いて、立ち絵の差分と台詞の両方を見せることができる。地の文での状況説明や心理描写はできなくなるが、初めから漫画や戯曲のようなものだと思ってシナリオを書けば問題はない。後は演出家の腕の問題だ。
で、このシステムで
シット・コム（シチュエーション・コメディ）をやりたい。「フルハウス」とか「アーノルド坊やは人気者」とか「やっぱり猫が好き」みたいなヤツ。それをネットで連載したい。1話30分くらいでクール（3か月）単位で毎週無料で更新したい。そしてそれをパッケージ化したのをコミケとかSteamで売りたい。ああ、今はスマホアプリですかね。
なぜシット・コムなのかと言えば、背景と立ち絵があれば後は無限に使い回せるから。あと俺が好きだから。シリアスな長編もできんこともないだろうけど、一点モノの立ち絵が多くなって経済的じゃないんじゃないかなぁ。ずっと同じ場所での会話劇って「十二人の怒れる男」くらいしか思いつかないし。
ネットで連載という形を取るのは、まあ、フラグメンツ思想的な？ それとプログラム的には普通のADVと一緒なので、HTML５とJavaScriptでなんとかなるかなって。畜生、FLASHがまだ生きていれば・・・。
この記事のタイトルを言い淀んでる理由が分かってもらえただろうか。ノベルゲーとも違うし、そもそもゲームと呼んでいいのか分らんし、デジタルコミックとも違うし。
誰かズバッとジャンル名を付けてください。あと台本と絵も！
