フはフラグメンツのフ
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「いまやれ! 早くやれ! うまくなるのを待ってないでやれ!」でもよぉヒロシ、俺にはやりたいことが無いんだ。何も無いんだよ。
「・・・何があればその手は治るのかしら」
「よほど酔うか
もう一度大隊を率いて
殿下と対陣するお許しを得られたならば」
「以前、中央アジアで命を落としそうになったときがある。その時に私は命を助けられた。よりにもよって最初に捕虜になっているはずの部下にだ。遠く、何十kmも離れていたのに。距離も状況も、軽く超えてな」この人の文章を読んでいると何故か涙が出てくる。個人的には佐藤大輔の後継者になりうる人材だと思っている。
「無線が手元にあっただけです。それがなにか」
「それがファンタジーだよ。我々はファンタジーを見た。あの日、確かに現実はファンタジーに食い荒らされたんだ。ファンタジーの浸食が力を与えたか、部屋の隅で震えていたエルフの娘が突然息を吹き返し、先頭に立って我々を外に連れ出した。」
ランソンは落ちくぼんだ目で、静かに語った。
「ファンタジーだ。ファンタジーだよ。私は一人のただの人間が現実を叩いてその壁を揺らすのを見た。一人の人間の拳がファンタジーを呼ぶんだ。世界の壁、常識の壁という奴が、一人の人間の拳を前に揺らぐのだ。ただの人間の渾身の一撃に世界がきしみをあげた」
(「マージナル・オペレーション02」より)
「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々が持つ不可能性である」
師匠は言った。
「君はバニーガールになれるか? パイロットになれるか? 大工になれるか? 七つの海を股にかける海賊になれるか? ルーブル美術館の所蔵品を狙う世紀の大怪盗になれるか? スーパーコンピューターの開発者になれるか?」
「なれません」
師匠は頷いて、珍しく私にも葉巻を勧めてくれた。私はありがたく押し頂き、葉巻に火をつけようとして手こずった。
「我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根源だ。今ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。君がいわゆる薔薇色の学生生活を満喫できるわけがない。私が保証するからどっしりかまえておれ」
「ひどい言われようです」
「毅然とするんだ。小津を見ならえ」
「それだけはごめんだなあ」
「まあ、そう言うな。小津を見たまえ。あいつは確かに底抜けの阿呆ではあるが、腰が据わっている。腰の据わっていない秀才よりも、腰の据わっている阿呆のほうが、結局は人生を有意義に過ごすものだよ」
「本当にそうでしょうか」
「うむ。……まあ、なにごとにも例外はあるさ」